私のペット自慢 『大好きなヤマトへ』
竹内歯科医院 歯科衛生士 竹内 愛
ヤマトへの手紙
ヤマトは今幸せ?
私はヤマトといるとすごく幸せだよ。もう16年間も一緒にいるんだね。今までもそしてこれからもヤマトは私にとって心の支えなんだよ。だってこの16年間私は、嬉しいこと・楽しいこと・泣いちゃうくらい悲しいこと、色々な経験をしてきた。そんな時部屋に入るといつもヤマトがいてくれた。ヤマトは全部知ってるよね、両親や姉妹ですら知らない私のすべてを。私はそんなヤマトと出逢えて本当に幸せ!今からヤマトが知らない、ヤマトが生まれてくる前のお話を少し聞いてね。
ヤマトの出自
ヤマトのおばあちゃんが我が家の庭に4人の子猫を連れて迷い込んできたのは今から17年前、ヤマトが生まれてくる1年前のこと。 4人の子猫は、ヤマトにとっては3人のおじちゃんと、そしてヤマトのお母さんだった。お母さんはヤマトと同じ黒猫だったから単純に『クロちゃん』って名前にした(でもヤマトは♪クロネコヤマトの宅急便♪から付けたからね)。クロちゃんはすごく人見知りでおとなしかった。
たま〜におじちゃんたちと庭を駆け回るけど、殆どはいつも一人でクロちゃんの庭の定位置で寝てばっかりいたんだよ。
半年後庭にはいつの間にかクロちゃんだけとなってたの。おじちゃんたちは皆独立して家を出てしまったし、おばあちゃんはよその家の車の下で亡くなってしまったの。寒かったんだね。もっとお家の中に入れてあげればよかった・・・ってすごく後悔したよ。
それからクロちゃんと私との生活が始まったんだよ。相変わらず人見知りで、甘えん坊でいつも一緒にいて男の人が近づこうとするとサーって階段を駆け上がってしまうくらい恥ずかしがり屋さんだったよ。
ヤマト誕生
そんなクロちゃんがね、お母さんになったんだよ。もちろんそれはヤマトのね。そうヤマトは私のベッドの上で生まれたの。クロちゃんがどうしてもお布団の中で生みたがって・・・だからお布団の上に箱を置き、クロちゃんの大好きなシーツを敷いて暗くしてあげたの。そしたらヤマトを始め全部で4人の赤ちゃんが生まれたよ!ヤマト以外は男の子。それはそれは輝くような白が2人と美しい黒が2人。「クロちゃんありがとう!こんなに可愛い子どもを生んでくれて・・・」って叫んじゃった。しかもね、クロちゃんは一人一人丁寧に身体を舐めて、私が生まれたてのヤマトたちを抱っこしても怒らないで見ていてくれた。
お母さんになった途端、急にクロちゃんが大人になっちゃって、私までもが子どもみたいにはしゃいでいたよ。
甘えん坊だったクロちゃんは、お母さんの貫禄を十分見せ付けてくれた。あっ、こんなことがあったよ!私の部屋からヤマトの兄弟のミルクが落ちた時があったの。そしたらクロちゃんが真っ先に階段を駆け下りてきて「庭に出して〜」って泣くから窓を開けると一目散にミルクを口にくわえて戻ってきた事があったの。すごいよね!ヤマトのお母さんは本当に優しかったし、かっこよかったよ。
ヤマトたちが無邪気に遊んでいるのを少し離れたところから静かに眺めているクロちゃんの姿を今でも覚えてる。時々子育てに疲れて一人になりたい時があったみたいで、そんな時は窓の下で「開けて〜」ってニャンニャン泣いて知らせてくれた。
クロちゃんの死&真実
そしてある雨が降る晩、いつものように「トイレに行く」って言うから窓を開けたの。クロちゃんは雨が降っていることに少し躊躇したけれど外に出て行ったの。「雨だから早く帰っておいでね」の言葉にクロちゃんが「ニャ〜ン」とないて振り返って私の目を見たの。それがね、私が生きているクロちゃんを見る最期になっちゃった・・・・。
その日から何日も経ってもクロちゃんは戻ってこなかったね。ヤマトも寂しかった?なんで帰ってこないの〜って思ってたよね?
私はテスト中だったけど、勉強に全然身が入らなかった。毎晩ヤマトたちを抱っこして開けっ放しの窓から”クロちゃ〜ん”って叫び続けてたっけ。
テスト最終日。家に帰ったら食卓に一通の手紙が置いてあったの。それは私の父からの手紙だった。
『あの雨の日の夜。理事会からの帰り、車が家のすぐ近くまで来たときカーブにさしかかった道の真ん中に黒いごみ袋のようなものが見えた。パパはそのまま家に帰り、ちょっと不安な気持ちでママにクロちゃんは?と訊ねると、”それがまだ帰ってこないのよ”との答え。パパはハッとしてママの手を引っ張るようにして急いで道路に戻った。不安は的中しさっき黒いごみ袋に見えたのはクロちゃんの変わり果てた姿だった。二人で静かにクロちゃんのお母さんの墓の横に埋めてあげた。クロちゃんの最期の場所は、道路がカーブしている所にあるガードレールの4番目のポールの所です。手を合わせてきてください』という内容だったよ。信じられなかった。クロちゃんがもう帰って来ない、もう触れることもできないなんて・・・・。
旅だち&幸せ
それからヤマト以外の3人は知り合いに引き取ってもらって急に一人になったから寂しかったね、ヤマト。でも私はヤマトだけで十分だった。だってヤマトはおばあちゃんやお母さんの分までずっとずっと私と一緒にいてくれてるもん。そんな幸せはないよ。ヤマトも私と同じ気持ちだったら嬉しいな。ヤマトと出逢って16年。お互い歳を重ねて誕生日には一緒にケーキの前で写真を撮ったり何でも一緒に過ごしているネ。
ヤマトは私にとってかけがえのない姉妹だよ。時には母親だったり、時には赤ちゃんだったり・・。
私が今こうしてがんばれるのはヤマトがいつも傍に居てくれるから・・・。忘れないでネ、17年前5匹の猫が我が家に来たから出逢えたこと。これからもずっとずっとよろしくネ!
大好きなヤマトへ 愛より
2回にわたってお読みいただいていましたがヤマトは6月20日
午前11時55分に16年2ヶ月の生涯を閉じました。
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