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§ 記憶に残る映画 §


 先日スタッフ慰労の食事会の席で『忘れられない映画』は何か、という話になった。
自分のことを言えば若いころと今ではかなり映画の楽しみ方が変わってきたように思う。田舎の寒村で出会う映画には限りがあったが『名犬ラッシー』→エリザベス・テーラーが主役の英国グランドナショナルの競馬物語『緑園の天使』→バーグマンの『ジャンヌ・ダルク』と成長し、青春の頃はストーリーで感動して主人公に同化するような映画を好んで観た。その代表が『エデンの東』であった。
 ただその過程で出会ったモノクロ映画『第三の男』の、暗い映像とチターという物寂しげな楽器による音楽とでそれまでの映画観が一新され、オーソン・ウェルズを逆にたどって『市民ケーン』に至ったという経歴がある。やがてベルイマン、タルコフスキーと心酔する対象が移り、ついにテオ・アンゲロプロスに出逢うこととなる。『旅芸人の記録』『ユリシーズの瞳』『霧の中の風景』『永遠と一日』のあのアンゲロプロスである。全画面に霧がかかったような映像の美しさと寡黙。その後そこから一歩も出ていない、というのが私の映画遍歴である。
 ところで最近『真珠の耳飾りの少女』を観た。フェルメールについての伝記的小説の映画化だが、映像の美しさと言葉の少なさで勝負できる久しぶりの映画らしい映画だった。ご覧になっていない方はまだ上映中ですからぜひどうぞ。

 食事会の席では俳優・女優の好みの話も出た。ハリウッドスターばかりで気が引けるがまなざしに酔わせられる『傷だらけの栄光』のポール・ニューマンが筆頭で、存在感のある俳優『第三の男』『市民ケーン』のオーソン・ウェルズ、『三つ数えろ』『カサブランカ』のハンフリー・ボガード、『真夜中のカウボーイ』のダスティン・ホフマンあたり。女優は枚挙に暇がないが、グレタ・ガルボとはタイムラグがあるので、"同時代”から選考すれば、『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』『昼顔』『哀しみのトリスターナ』『リスボン特急』(ああ枚挙に暇が・・・・・)のカトリーヌ・ドヌーブ、『旅情』のキャサリン・ヘップバーン、『華麗なる賭け』のフェイ・ダナウェイ・・・・。
映画の話をしだすととどまるところを知らないクチなので以下は続編ということでオシマイ。

 
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