抜 髄
抜髄(ばつずい)とは歯の中心にある歯髄を取り除くことを言います。いわゆる”神経を取る”ことを専門的に表現すると”抜髄する”ということになります。
図を見るとわかるとおり歯には歯根の先端から栄養を補給する血管と一緒に痛みを感じる知覚神経が入ってきています。むし歯が進行するなどして痛みが出てくると、やむを得ず抜髄する(神経を取る)ことが必要になることがあります。
抜髄は周辺の歯肉に浸潤麻酔を施した上、削って歯髄の上方を開けてファイルという器具を使って行います。この際には歯根の長さや形態を確認するためレントゲンやエンドキャナルメーター(根管長測定器)を使います。
抜髄に際しては神経ばかりでなく歯に栄養を与える血管(動静脈)も同時に取ってしまいますから、歯は脆くなります。ですから抜髄を決定するには慎重な診査が必要です。
多くのケースではむし歯の進行とともに、冷たいもの(水、風、食物など)がしみる→熱いもので痛む→かみ合わせると痛むのように症状が変化します。
冷たいものに対しては健康な歯であっても『しみる』と感じることがあります。疲れているときや他の病気で消耗している時などは体液が酸性に傾いて痛みの閾値(痛いと感じる限界)が低くなる傾向になります。状況が改善するとしみなくなることが多いので、はっきりとしたむし歯の所見がない限り歯科医師は何も処置をしません。
また患者さんが治療充填を受けた後に同様の症状を訴えることがあります。しかしこの場合も時間が経つと歯髄の中に第二象牙質が形成されるなどしてしみる症状が消えるケースが多く、治療後冷たいものにしみることに対しては医師は経過観察を勧めるのが普通です。
抜髄はズキズキした自発痛がある場合、温熱に痛みを感じる場合(冷熱の時に比べて非可逆的なことが多く、すでに歯髄の変性が始まっていると判断します)、歯髄に明らかに大きな穴があいている場合に行います。
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