ドライマウス(口腔乾燥症)
ドライマウスは口腔乾燥症ともいわれ、必ずしも疾患名ではなく口の中や喉の渇きを主訴とする症状を総称して言います。近年ドライマウスを症状として訴える人が増加している背景には現代人の食生活の変化や過剰なストレス、気密性空間での生活などがあることがわかっています。
症状としては初期には口の中のネバネバ感、歯垢や舌苔の増加、軽度の口臭が現れ、乾いた食物が食べにくいなどが生じ、進行すると唾液分泌量が著しく低下し口腔内や口唇の乾きが顕著となり口臭がひどくなったり、舌表面がひび割れ、「舌痛症」で食事がとれない摂食障害、会話時にしゃべりづらいなどの発音障害も現れます。
同時に目が乾く症状が出ることもあります。
口腔乾燥症の原因としては食生活(現代の食生活では唾液を十分に出さなくても飲み込めるようなファーストフードや食事が目立ちます。このため唾液の分泌が従来よりも少なくなり、口の中の潤いが足りず、口が渇く、舌がひび割れて痛い、などの症状が出がちです)、精神的ストレス(ストレスがかかったり緊張をすると交感神経が刺激され、唾液の分泌が抑制されます)、薬物(抗うつ剤、鎮痛剤、抗パーキンソン剤、降圧剤などの多くの薬物の副作用として唾液分泌の低下があります)、年齢によるもの(年齢とともに口や顎の筋力が低下や萎縮がおこり唾液の分泌量が低下します。70歳以上で男性16%、女性25%の量的低下。80才では老人性萎縮により25%以上低下)
口腔内の事情に起因する原因としては口呼吸(→口呼吸は口腔内を乾燥させ、口腔粘膜の痛みやプラークの増加を引き起こすため、歯周病やカリエスの発症も助長します)、嗜好品の摂り過ぎ(ニコチンやカフェインは高い利尿作用を有するため、一時的に脱水を起こし唾液分泌が抑制されます)、摂取水分の不足(全身の機能を円滑にするには、成人の場合1日あたり体重の1/20の水分摂取が必要とされています。そのうちの一部が唾液分泌に利用されます。食事などで自然に摂れる水分量は1.5Lといわれていますので、残りの1Lは食間に摂らなければならない計算になります)、不十分な咀嚼回数(咀嚼回数の減少は、唾液腺の萎縮と唾液分泌の低下をもたらすことが知られています。これは食生活のあり方にも関連しています。たとえば幼児期にあまり咀嚼しなくても食べられる食物を中心とした食生活を続けていると良い咀嚼習慣が身につかず、結果的に唾液分泌低下を引き起こすことがあります。軟食や流動食を多く摂っている場合や、早食いになっている場合にも注意する必要があり、このような習慣は成人してからでなく、小さい頃から習慣づけることが大切です)全身に起因する口腔乾燥症の原因として有名なのはシェーグレン症候群があります。またホルモン・代謝系の異常として糖尿病、尿崩症、甲状腺機能亢進症、機能低下症、さらにそのほかの原因としては体液・電解質異常、放射線被爆による障害、神経性要因、微量元素摂取不足(主として亜鉛など)、歯磨剤の過剰使用などがあります。
治療法としては原因がはっきりすれば原因となるものを除去することが第一ですが多くの場合は原因が特定されなかったり複数の要因が関わっています。一般的には生活指導や対症療法が中心となります。生活指導としてはファストフード中心の食生活からゆったりとした食事、十分な咀嚼を必要とする食物への転換による唾液分泌の促進を図ることが必要です。またブラッシング方法の改善、できる限り過剰なストレスを排除すること、開放的な家庭空間を確保することなど。対症療法としては保湿力の高い洗口液、保湿ジェルの使用、夜間の保湿用マウスピースの使用、ガム療法、味覚刺激療法、唾液腺マッサージなど。全身的要因がはっきりしていればそれに対する治療が必要となります。
調布市 竹内歯科医院 042-486-0381
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