■ 挺出(ていしゅつ) ■

 ねずみが壁に向かってガリガリと自分の歯をこすりつける図は、実際にはほとんどの人が見たことがなくても知っていることでしょう。ねずみの歯は絶えず伸び続けているのですが、実は人間の歯も似たようなものなのです。
 歯を抜いた後には義歯やブリッジなどを入れてこの部分を補うことが必要です。このことを補綴(ほてつ)する、と言います。補綴をする目的はもちろん咀嚼という口の機能を損なわせないためです。長い間補綴をせずに放置すると咀嚼機能が損なわれることはもちろんですが、抜いた歯とかみ合っていた歯が抜いた場所に向かって延び出してきます。この現象を『挺出』と言います。挺出の度合いが進めばすすむほど補綴がしにくくなります。また歯には顎の中心(顔の中心)に向かって傾斜する性質があります。延び出したり傾斜すると顎がスムーズに動かなくなって抜けた部分だけでなく全体の咀嚼も満足にできなくなります。歯を抜いたらできるだけ早く補綴することが大切です。


写真は日本歯科医師会資料より転写