■ 唾液の効用と役割 ■

 唾液には私たちが日頃あまり意識しない内にその恩恵にあずかっているすぐれた効用があります。まず唾液に含まれる酵素による『食物の消化作用』があります。また咀嚼した食物を丸い形にまとめる『食塊形成作用』。(この食塊が形よく形成されないと高齢者では食べ物を誤って気道に送り込んでしまう”誤嚥”は起こりがちになります)
 
また『自浄作用』は重要な役割のひとつです。唾液は咀嚼により刺激を受けて分泌されます。多量の唾液により歯の表面が洗浄されます。ファーストフードや軟らかい食物ではよく咬まなくても飲み込めるため唾液の分泌は抑えられ、その結果自浄作用が発揮されず口腔内は洗浄されません。
 
また『再石灰化作用』があります。エナメル質の表面が初期う蝕などで浸食を受けても唾液中に含まれるハイドロキシアパタイトという物質がエナメル質を絶えず修復させます。ただしその作用を期待するためには食物の残渣(食渣)が歯の表面に残らないように常に清掃を怠らないことが必要です。
 
さらに口腔内細菌のコントロールをする『抗菌作用』、体に悪い作用を及ぼす『活性炭素を消す作用』『唾液の酸性度(PH=ペーハー)を一定に保つ作用』、発音や会話を円滑に行えるようにする『潤滑材としての作用』、義歯を粘膜上に安定させる『吸着作用』などなど数え上げたらきりがないほどの働きをしてくれます。
 一方この唾液が十分に分泌されないと、上記の作用が行われないことによる様々な弊害が生じます。さらに歯肉が退縮した歯の歯根に多発性のう蝕を生じさせます。また歯肉炎や口内炎を起こす心配があります。
 唾液を十分に分泌させるためには噛み応えのある食物を一口につき何回も(30回くらい)噛むことが必要です。