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§ 歯科疾患・治療のQ&A §

検査時の歯肉出血/歯を抜いた後の処置/乳幼児の食生活を正しく習慣づけるための心構え/変色歯の治療/神経を取った歯が痛む理由/治療後も水に沁みる理由/むし歯予防とフッ素の関係/ 妊娠中のレントゲン撮影/歯ブラシの保存方法/効果的な歯磨き法

 歯周病の検査で歯肉出血があるといわれました。ふだんのブラッシングでは出血を経験しないのでどうして検査のときに出血するのかわかりません。教えてください
 A  まずふだん出血しないとのことですが歯肉の表面をブラシがこするような磨き方ですとたとえ歯周病に罹っている歯肉でも出血することはありません。診療室ではポケット検査の際にプローブという器具を使いますがその器具がポケットの内面をこする際に出血があるかどうかを見て診断しています。ポケット内部の歯肉は正常な状態であれば上皮(外側の歯肉表面とまったく同じ組織)で覆われていて出血はしません。ポケット内部に細菌が侵入してプラークが形成されると上皮組織が侵され非薄になります。内部では炎症性細胞が増え血管が拡張します。そこへプローブが入ってきて薄い上皮に接触して出血するわけです。
 同じ出血でもにじむような出血は日常の患者さんのプラークコントロールに問題があることを意味します。
そうではなくてポケットの底部から多量の出血がある場合はそこに深刻な炎症が存在し、歯周病が活動期にあることを示しています。出血の様子によって治療法や指導方法が変わってきます。いずれにしても日常出血を経験しないで検査で出血を指摘されたらふだんのブラッシングに少し問題があると考えてよいかと思います。


 歯周病のため歯を抜きました。抜いた部分にはすぐ入れ歯をする必要があるのでしょうか。またどんな方法が良いのでしょうか。

 A どの歯を抜いたかにもよります(親知らずを抜いた場合は必要ありません)が、抜歯した部分の治癒を待ってできるだけ早く処置をしてもらうことをお勧めします。歯を抜いた後放置するとその歯とかみ合う相手の歯が抜いた部分に向かって延び出してきます。また抜いた歯の前後の歯が抜歯したあとの空隙に向かって倒れたり移動してきます。そのようになると歯列が乱れうまくかみ合わなくなったり
延び出した歯が歯肉に食い込んで傷を作ったりします。また入れ歯の収まりも悪くなります。
 抜いた部分を何らかの方法で補うことを補綴(ほてつ)と言います。補綴の方法としては取り外しのきく入れ歯(義歯と言います)、前後の歯を削って固定するブリッジ、骨(歯槽骨)にチタン製のネジを埋め込んでその上に被せものをするインプラント、稀に不要な親知らずを抜いて移植するなどがあります。
 それぞれの長短所を述べます。義歯はほかの歯をほとんど削らずに入れることができる反面、日常的な取り外しの面倒や違和感が問題です。ブリッジは違和感はあまりありませんが場合によっては無傷の歯を削る必要があります。また抜けた部分に加わる咬合力を引き受けるため負担過重となることもあります。インプラントは症例が適していれば非常に優れた方法と言えますが、補綴部位、歯槽骨の状態などを十分検討する必要があります。


 乳幼児の食生活を正しく習慣づけるにはどのような心構えが必要ですか
 A 乳幼児が正しい食生活を習慣づけることは歯科的な見地からばかりでなく健やかな成長のために非常に大切なことであるのは言うまでもありません。
もちろん丈夫な歯の成育のためには胎生期からの注意が必要ですが、母乳から始まり離乳食に切り替わるあたりから母親の知識と意識・心構えの差が子どもの将来を左右してきます。
離乳食に移行する頃から味覚形成が始まります。この際にこそ甘味や塩味に関して薄味に慣れさせましょう。子どもにとって(また大人にとっても)「美味しいもの」とは「甘いもの」であるといっても言い過ぎではありません。過度な甘味による健康への悪影響は数知れずあります。
 また食べることに意欲を持たせることも大切です。今は大人も子供も「空腹感」を味わうことが少なくなりましたが、子どもの頃を思い出してみましょう、お腹が空いた時は味のことなど忘れてもりもり食べませんでしたか。乳幼児も同じことです。ときには適度な空腹を感じさせつつ甘味塩味に偏らないバランスのとれた、また楽しい雰囲気の中での食事を心がけましょう。


 私は子供の頃から、恐らく抗生物質の影響と思われる黄色く変色した歯で悩んでおりました。なんとか歯を白くしようと思い、強いブラッシング圧をかけ、大量の研磨剤入りの練り歯磨きを使って毎日歯を磨くうちに、歯の表面のエナメル質が削れ、その下の黄色く変色した象牙質が露出してしまい、一層黄色く見えるようになってしまいました。
 近所の歯科医院で見てもらっても、これは治らない、と言われました。しかし、先生のHPで「変色歯の治療」の写真を発見し、こんなにもきれいに修復ができるのかと感激いたしました。
 そこで質問なのですが、このような歯を回復させる治療(私の場合上下16本)は健康保険の適用は可能なのでしょうか

 
 A 
健康保険の適用になるかどうかについては「病名(診断名)」「使用する材料」「治療方法」の3点から判断されます。この3つの事項がすべて保険で認められる範囲内にあれば適用されます。つまり、病名がカリエス(う蝕)や磨耗症であること、材料が保険で認められているものであること、治療方法が保険で認められている方法であること、以上の要件をすべて満たしていれば原則として保険治療が可能です。
 ではご質問のケースはどうでしょうか。正確な診断は実際に拝見しないとできませんが、お申し出のとおりであれば適用内かもしれませんが、変色を美容目的で回復するのであれば適用されません。拝見しないと「磨耗症」という診断がつけられるかどうかは確定できません。
 次に使用材料ですが、薬剤と同様に歯科材料も保険で認められているものとそうでないものがあります。陶材や一部の樹脂(ハイブリッドセラミックスなど)は適用外です。このケースにはあてはまりませんが貴金属も使用できません。従来保険治療の場合はアクリリックレジンという樹脂を使用することがほとんどでしたが、この材料には磨耗しやすい、変色しやすい、ツヤがないなどの欠点があります。近年では硬質レジンという材料に光を当ててかためる方法が一般的になってきました。治療範囲が狭い範囲(お隣の歯に接しない、先端まで及んでいないなど)であれば口腔内で治療が可能です。全体をくるむような場合は型を取ってラボ作業で作製し次回かぶせるような治療になります。16本の歯がすべて使用に耐えられるかどうかは咬合関係などを考慮した医師の判断に委ねられることになります。
 最後に治療方法ですが、歯の表面だけを削って(裏側に手をつけないで)白い歯を貼り付ける方法は『ベニア冠』と称して保険適用外です。裏まで削って全体をくるむような治療は基本的には保険が適用されます。ただし第一小臼歯については一部の方法は適用外です。

神経を取った歯のはずなのに時々痛みます。どうしてでしょうか。

 A  
歯の神経を取ってあれば通常の場合痛みがないはずです。けれど取ったばかりの時は神経の中につめた薬物の刺激のため歯根の先端の神経が刺激されて痛んだり、場合によっては咬合痛が出たりします。しかしこの症状は次第に消えていくはずです。これとは別の場合で神経を取ってから数年以上経過している場合は歯根の先端の歯槽骨や歯根膜に炎症が起きていることがあります。この場合はレントゲン診査のうえ場合によっては再度神経の治療(根管治療)が必要になります。また痛みの原因が歯周病の急性発作によることもありますから専門医による鑑別診断が大切です。

神経を取らないで金属をつめてもらいました。もう1週間もたつのにまだ水にしみます。大丈夫でしょうか
 A 
多少深いむし歯であれば当分の間水にしみるのは全く心配要りません。次第にしみなくなってきます。これはむし歯の深い部分に相当した神経の部屋(歯髄)の中に、一種の防御反応として『第二象牙質』が出来てくるからです。歯の神経は取らないにこしたことはありません。良心的な医師ならば第一の選択としては神経を残すことを考えます。もうしばらく様子を見てもいいのではないかと思います。

妊娠3ヶ月ですが歯科治療でレントゲン撮影が必要といわれました。胎児への影響はありませんか。
 A 
歯科の診断のためのレントゲンの被爆量は微量であり、特に当院で採用しているデジタルレントゲンはいままでの8分の1くらいで自然界で受ける放射線量にも匹敵する少なさです。また必ず防護衣を付けていただくことと放射線の照射方向を生殖腺に向けないことなど最大限の安全を図っております。ただしいくら少ないといってもゼロではありませんから当院では妊婦の場合安定期である妊娠5ヶ月に入るまではレントゲン撮影は控えています。大切なことは妊娠の予定がある場合にはよりこまめに健診を受けレントゲン診断を必要としないように注意を怠らないことだと思います。

むし歯予防とフッ素の関係を教えて下さい。またフッ素には害作用はありませんか
 A 
フッ素というと何か特別な薬品のように思われるかもしれませんが、人間の体内や色々な食品に含まれているものです。あまり大量に飲むようなことをすれば斑点をもつ歯が生えくるなどの害作用もありますが、年数回のフッ素塗布やフッ素入りの歯磨剤を用いて歯磨きする程度ですと害作用は全く心配要りません。フッ素は歯を構成するリン酸カルシウムと結びついて歯の質を強化する作用があります。またごく初期のむし歯ですとちょっと溶け始めたエナメル質をもう一度再石灰化して元に戻す作用もあります。是非定期的なフッ素塗布、フッ素入り歯磨剤の使用をお薦めします。

歯ブラシはどのように保存したらよいでしょうか。
 A むし歯や歯周病に関係する細菌は嫌気性菌といって空気を嫌います。ですから化粧棚の奥の方にしまったり、コップの中に毛先を下にして保存することは避けましょう。ときどき日光に当てることも清潔に保つためには良いことです。

歯磨きを効果的にするこつを教えて下さい
 A まず汚れがたまりやすい箇所を把握することが大切です。そのためには先月ご紹介した『歯垢染色』(下左写真)をときどきしてみるといいでしょう。赤く染まった箇所を何とかしてきれいにしようとするところから、その人に合った、また歯の位置や形に適した歯磨き方法が見つかると思います。一つアドバイスするとすれば一本の歯ブラシだけですべての歯の汚れを完全に取り除くことは不可能です。通常の歯ブラシのほか右下の写真のような補助的刷掃用具を身近において工夫しながら『ご自分なりの磨き方』を身につけて下さい。すべての人に共通するブラッシング方法というのはありません。当院ではブラッシング指導やブラシの選択についてのアドバイスを常時行っています。お気軽にご相談下さい。
                     

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